私がこの能登七尾の寺にある、藤澤清造の墓を初めて訪れたのは三年前の春だった。大正中期にあらわれたその処女長篇『根津権現裏』を、今の比ではなかったひどい四面楚歌の状況下で苦しまぎれに読み、余りの共感からこの作家の他の著作の掲載誌を古書展なぞで探していくうち、すっかり藤澤清造と云う作家の虜になった。
「けがれなき酒のへど」より。
心酔する大正期の作家、藤澤清造の月命日に墓参にやってくる主人公。藤澤清造の菩提寺は石川県七尾市にある西光寺です。
七尾は私(芝田)の故郷です。ああ、小丸山公園の裏手かー、とそこそこの土地勘はありますが、そんなところに文学者ゆかりの地があったとは知りませんでした。
掲載日:2011-12-11