松江・出雲、にっぽんの神々へのごあいさつ

行程

[島根・広島/松江、出雲、鞆の浦] 松江から出雲へ、神々を訪ねる旅です。八重垣神社、出雲大社に須佐神社、いわゆるパワースポットめぐりですね。木次線、福塩線を使って福山へ抜けます。
「松江・出雲、にっぽんの神々へのごあいさつ」地図
2007-06-17
東京―松江
2007-06-18
松江
2007-06-19
松江―出雲―日御碕―出雲
2007-06-20
出雲―須佐―出雲
2007-06-21
出雲―三次
2007-06-22
三次―君田温泉―三次―福山
2007-06-23
福山―鞆の浦―福山―東京

旅行記

2007-06-17(1日目/日曜日)
突然隠岐の気分になったけど

一週間の休みを取って、予定のない旅に出よう。といっても大まかな方向くらいは考えてるもので、今回は東北かなと思ってたんでした。しかし出掛けにうっかり吉方位を調べたら西だと言うじゃないですか。西方で行ってみたいところ……と頭を巡らせると思い浮かんだのは隠岐。隠岐?と何の下準備もなく「いい旅・隠岐気分」になりつつ、松江方面へ向かうことにしました。隠岐へ船で渡るには境港か松江がベースになるんですけど、境港deゲゲゲなムードでもなかったので松江か。

新幹線と特急を乗り継いで、ノートPCでゲームを延々やってる間に松江へ到着。現地入りしたらもう夜といういつものパターンで、そのまま駅前に取ったホテルへ。

2007-06-18(2日目/月曜日)
ひとまず松江を観光しよう

八重垣神社
八重垣神社

まだ時間はたっぷりある、急ぐ旅じゃない。隠岐はあとでいい。とかなんとか言いながら松江を散策することにします。駅からバスに乗り20分ほど、松江エリア有数のパワースポット、八重垣神社を訪れました。

いい神社ですね。いい気が出てる神社って、鳥居をくぐる瞬間にわかる。さっと空気の質が変わるんですよ。こころよい微風に変わる。本殿まわりにも気が回ってるけど、やっぱり裏の池からくる気のほうが強いかな。

ここは縁結びに霊験のある神社です。なにしろ「古代結婚式発祥の地」なんですから。八岐大蛇を退治した素盞嗚尊(スサノオ)が稲田姫命をめとって暮らした場所です。良縁に恵まれたい人はここで祈るといいみたいですよ。

八重垣神社・鏡の池
八重垣神社・鏡の池

さて、本殿裏手、奥の院にある鏡の池へ。森のなか、また急に体感温度が変わった先に、鏡の池があります。厳かな雰囲気に満ちていながらも、気持ちのよい森です。

占い用紙に硬貨を乗せて池に浮かべると、その沈み方で出会いの時期などが占えるというので女性に人気の恋愛祈願スポットになってます。早く沈むと早く良縁に恵まれるとのことで、5円玉よりは10円玉、100円玉、いっそのこと500円玉でどうぞ。僕が行った時にはおばちゃんたちがきゃあきゃあやってました。……あなたたちはもういいんじゃないのか。

八重垣神社の前から「はにわロード」という道が伸びているのでこちらを進みます。道沿いに唐突にハニワが置いてあったりするんです。古代のロマンを漂わすのにハニワは幼すぎるのではと思うんですけど、山里の柔らかい自然のなかを進む、さわやかな道です。途中、古墳を覗いたりしながら30分ほど歩くと神魂神社に着きます。

神魂神社
神魂神社

出雲国造家の祖、天穂日命が創建したという神魂神社。神の魂と書いてかもすと読みます。急な石段をのぼった先にある国宝の本殿は日本最古の大社造りというもの。そのわりには誰もいなくって静かな社でした。

その名のとおり、境内には神の魂がとどまってるような気がしましたね。気のせいですか、そうですか。

このあたりは古代出雲の中心地だったところ。国庁跡だとか当時を偲ばせる遺構、遺跡が点在してます。それらを見やりながらぶらぶらと歩きます。途中「八雲立つ風土記の丘」には考古史料などを展示する資料館などがある……ようだったのですが改装中で閉まってました。

真名井神社
真名井神社

真名井神社へ。丹後元伊勢にも同名の社がありますし(というかそっちのほうが有名ですけど)、ほかにも全国に真名井はあって、どこも「神聖な水」に名づけられてます。一方で、自然に宿る力・霊力をマナ(Mana)と呼ぶ概念が太平洋の島嶼にありますけど、真名井はもう誰が見ても「マナの湧く井戸」ですよね。要するにムー大陸で使われてた言葉で、それが太平洋にも残ってるし日本にも残ってるということですね(真顔)。

さてそんな真名井神社ですが、東へ少し行ったところに真名井の滝があるというので行ってみたかったのですが道に迷って見つけられませんでした。駅前の観光案内所でもらった地図をもって歩いてるんですけど、もっと分かりやすくしておいてほしいですね。「真名井の水を使った流しそうめん」の看板を掲げる店はやたらと並んでます(でも開いてない?)。

出雲国分寺跡
出雲国分寺跡

出雲国分寺跡に出ました。全容がほぼ完全な状態で出土した、全国でも珍しい遺構です。幼稚園の集団が見学に来てました。歴史を解説しても分かるまいに、見学というより走り回って遊べる空地としてやってきてるんですか? まぁ実際に、だだっ広いただの草むら、ではあるんですけど。

八重垣神社から5km強のウォーキング。

松江城
松江城

バスに乗って松江市街へ戻ります。なんとなく昼を食べそびれてたので駅前で遅めの昼食をとりました。

松江城に行ってみました。11年前にも一度来てますけど、山陰地方で唯一現存する天守閣は、あらためて立派なもんだねぇと感嘆します。「博物館だ」としか言えない城が多いなかで、ここはちゃんとお城です。最上階からは宍道湖が望めます。

だんだん陽が傾いてきて、でもちょっと半端な時間でこのあとどうしようかと、お堀沿いのベンチに座って考えます。外国人観光客多いなーと行き過ぎる人たちを見ながら。

県立美術館
県立美術館

昔松江に来た際には行ってないところ、ということで宍道湖畔にある県立美術館に入りました。「有元利夫展」をやってる。名前は知らないけどどこかで見たことがあるような……と思ってたら、その絵を装丁に使った本が最後に並べられてました。宮本輝の著作がずらっと。あ、持ってるわコレ。

そうか、宮本輝の本でよく表紙に使われてる人だったんですね。宮本輝の作風によくあった絵だなと思ってた、その画家でしたか。こんなところで「旅と現代文学。」なものに触れて驚いたりします。

宍道湖うさぎ
宍道湖うさぎ

美術館の外には湖畔沿いにオブジェが並べられたりして、野外展示のような形にもなってます。

うさぎがいます。これは帰ってから知ったんですけど、開運スポットとして人気のものだったんですね、これ。12匹並んでる「宍道湖うさぎ」の、湖から2番目のウサギに西を向きながら触れると幸せが訪れるんですって。シジミを供えるとなおよいとか。

そんなの知らないけどただ可愛かったので撮っただけです。触ってません、残念。

宍道湖の夕暮れ
宍道湖の夕暮れ

柔らかく夕暮れてゆく水面を眺めながら湖畔を散歩します。ぴちゃんと魚が跳ねるたびに波が傾いた光をきらきらとはじく、しんとした風景です。

ホテルに入って隠岐の情報を調べ、明日の日程を検討してたんですが、そのうちになんだか隠岐に渡るのが面倒になってしまいました。高速船、フェリーの時刻がどうもうまくつながらなくて……。日帰りはまず無理で、隠岐で宿を取らねばならない、うーん、どの宿?ってネットで調べるとどこも満室だったり。ということで「いい旅・隠岐気分」はすばやく撤回、明日は出雲へ出ることにします。

2007-06-19(3日目/火曜日)
出雲は日御碕に大社へ

日御碕神社
日御碕神社

松江から出雲へ出て、出雲市駅からバスで海岸に沿って45分、日御碕(ひのみさき)へやってきました。降り注ぐ日差しの中で日御碕神社の朱がまぶしいです。海に面した神社独特の、広がりある伸びやかな神気がいいですね。いやこの浄化されたパワーはすごい、と深呼吸。

楼門をくぐった正面に天照大御神を祀る日没宮(下の宮)、右手高台には素盞嗚尊を祀る神の宮(上の宮)があります。伊勢が昼間を治め、出雲が夜を治めるという意味の日没宮の由来、またスサノオがアマテラスを見下ろす構図などに、なかなか興味深いものがありますよね。

出雲日御碕灯台
出雲日御碕灯台

周辺は日御碕遊歩道となっていて、柱状節理のごつごつした岩壁と松林の間に灯台が見える、岬らしい風景。青空にすんと伸びる白い灯台は美しいです。この出雲日御碕灯台は日本一の高さなんですって。

食堂に入って新鮮な海の幸たっぷりの海鮮丼を食べて、昼からビールを飲んで、酔い覚ましに岩場で寝転がってしばらく午睡しました。なんて気持ちのいい空間。

経島
経島

このあたりはウミネコの繁殖地・越冬地として知られるところなんですが、経島にはカメラをズームして見ると気持ち悪いほどたくさんのウミネコが群れてました。日御碕神社がここにも小さな社を置いてるんですけど、なんだか鳥の巣箱みたいになってます。島全体が白っぽいのですが、ウミネコの群生とその糞で白く見えます。

しばらくニャアニャア言うのを聞いてから、またバスに乗って出雲の市街へ戻ります。

出雲大社 神楽殿
出雲大社 神楽殿

出雲大社。出雲大社とはなぜか相性が悪いんです。11年前に出雲を目指したときには台風とぶつかり、松江まで来て撤退してます。9年前には出雲大社に到着したとたんに土砂降りの雨になって全身ずぶ濡れ、参拝も早々に立ち去る状態でした。出雲系の神々には嫌われてるのかもしれません。

今回はきれいに晴れたんで、お許しを得たーと勇んで参拝。二礼四拍手一礼。

当時は48メートルにおよぶ高さがあり、古代もっとも高層の建築だった、という言い伝えがあります。十数階建てのビルの高さなんで、古代の技術ではそんなのムリ、ただの伝承だとされてきたんですが、近年、それが事実だったのではと思わせる遺構が見つかったりしてます。巨大な柱の跡がいくつも、とか。想像すると楽しいですね。

出雲大社
出雲大社

出雲大社の祭神、大国主大神は本殿正面むかって右手から左手の方向を見る形、西向きに鎮座されてると言います。なので大国主大神の正面から参拝したいと思えば左手に回ったこの写真の位置ですね。見ていると、ここから参拝してる人も少なくないです。

この構造は珍しいものなわけですが、その理由には諸説あります。当時の住居建築の形式に添ってるものだとか、あの世の守りとして西方浄土を見つめてるとか、あるいは怨霊鎮魂のゆえだとか。

素鵞社
素鵞社

じゃ本殿正面から参拝するとどうなるの、というと、本殿正面に正対してる神はその奥にいます。父(?)素戔鳴尊です。本殿をぐるっと裏手にまわると素鵞社があって、そこには素戔鳴尊が祭られているのですね。そのあたり(本殿裏)は気のいいところで、電波が入る場所を探すかのようにうろうろしている人が何人もいます。僕もそのひとりです。

そんなことを言ってるから嫌われるんでしょうか、大社前のバス停からバスに乗ったとたんに大雨になりました。こんなに晴れてたのに突然の豪雨。3分であがったんですけど、これは何かのメッセージですか?

出雲市街で本を買ったりぶらぶらして、出雲そばを食べて、出雲駅そばに宿を取ります。

2007-06-20(4日目/水曜日)
出雲のパワースポット、須佐へ

須佐神社
須佐神社

出雲市駅からバスで40分、終点出雲須佐でタクシーに乗り換えてやってきた須佐。目的地は須佐神社です。某江原氏が「日本有数のパワースポットである」と言ったことから一躍有名となった神社なんです。スピリチュアル系のファンがいっぱいで、もう観光地然としたムードになってるとも聞いてたんですが、僕が行った時には誰もいませんでした。静かに境内を歩きます。

ここはスサノオの終焉の地として、その魂が鎮まるところです。なんだかスサノオゆかりの地ばかりを巡ってるような気がしてきますが、出雲を歩くってすなわちそういうことですよね。

昨日行った日御碕神社が横に広がるような気配をもつのと比べて、こちら須佐神社は縦に昇るような気があります。おそらくは本殿の裏にある、杉の巨木の影響なんでしょうね。樹齢1200年を数える老杉で、境内でも大きなパワーが湧くところです。杉を根元から見上げてしばらく放心。

素鵝川
素鵝川

神社の正面には天照社もあって、スサノオとアマテラスが向かい合ってる状態です。それがまた、一帯のバイブレーションを増強してるような気がします。

天照社の横から川辺に降りました。素鵝川が流れています。川辺に座ってしばらく読書。

出雲須佐温泉ゆかり館
出雲須佐温泉ゆかり館

神社の近くには温泉があります。出雲須佐温泉ゆかり館、宿泊施設ですけど、日帰り入浴も可能です。明るく清潔な施設。天然温泉です。パワースポットって温泉があるところが多いですよね。水(あるいは湯)が湧き出すということと、気が湧き出すということは近しいことなんでしょうね。

いいお湯でした。さぁ帰るか。バスの終点からタクシーに乗ってきたと先に書きましたけど、2~3キロの距離で歩けないことはないのですが、タクシーの運転手に聞くと「歩くと遠いよー、帰りはまた電話してタクシー呼んでくれたらいいよ」と名刺をいただいてたのでした。バスの帰り時刻をメモった紙を見ながら、ちょうどよい時間だなとタクシー会社に電話。すると「運転手みんな昼食に出てて、しばらく戻りませんけど」とすげない対応。このバスを逃すと次のバス時刻は2時間近く後。

まぁいいや、とゆかり館に隣接する食事処で雉そばの昼食。もちろんビールも。それで時間をつぶしつつ、次のバス時刻が近付いてきたのでまた電話。「14時発のバスに乗る? 今ゆかり館? そりゃ間に合わないねぇ」「……間に合わない?」

八雲風穴
八雲風穴

さらに2時間後(16時頃)のバスに乗ることにして、八雲風穴という見どころに行ってみました。地下水によって冷やされた冷気が噴き出し、夏でも涼しい天然の冷蔵庫になってます。が、7~8月のみ営業とのことで、施設は閉まってました。がーん。それでも、施設横にも冷気が出ている場所があり、設置されている温度計を見ると11度くらい。ずいぶん涼しいです。歩いてきたところの汗も引いていきます。

そんなのを見たり、道に迷ったりしてるうちに時間になり、今度はうまくタクシーをつかまえ、バスに揺られて出雲、出雲市駅へ戻りました。須佐で一日が暮れてしまいました。

2007-06-21(5日目/木曜日)
雨のために突然鉄道の人になる

この日は大田、三瓶山のほうへ行こうかなと思って前日バス時刻まで調べておいたのに、天気を調べるのを忘れてて、朝から雨……予定をばっさり捨てて「ローカル線車窓の旅」に変更します。

宍道駅から木次線に乗ります。スイッチバックのある、鉄道ファンなら乗ってるはずの山岳鉄道ですが、私は初めてでした。中国山地を横切る路線、山奥へと進んでいきます。

赤字ローカル線にしては、生活ラインとして利用してる方も多いのかな?と最初思ったのですが、地元民たちはどんどん降りて行き、鉄道ファンが占める割合が先へ行くほど上がっていきます。スイッチバックに近づいてくるとカメラを持ってそわそわと席を立って行く人たちがそうですけどね。見分けやすいです。僕はもちろんそんなところで立ち上がりません。

3時間弱で備後落合駅につき、芸備線に乗り換え、さらに1時間ちょっとで三次へ。

三次はすぐにホテルを確保、近くのビアレストランで夕食を取って寝ただけです。終日雨でした。

2007-06-22(6日目/金曜日)
温泉に寝転び過ごす雨の三次

君田温泉 森の泉
君田温泉 森の泉

雨はあがりませんが、三次です。広島県の北部になります。

雨でも楽しいところ、んー、温泉があるようだなとバスに乗ってやってきたのが君田温泉君田温泉森の泉。温泉のある道の駅、という感じです。

湯はやや白濁した効能ありそうな温泉でした。時間はたっぷりあるので(何の予定もないので)ゆっくりと浸かります。休憩室で昼寝する勢いで。

鉄道
鉄道

「急行みよし」。今月いっぱいで廃止とのことで、「22年間ありがとう」のマークが付いてました。でもそれには乗らずに、三次から福塩線に乗って福山へ出ます。福山で宿泊。

2007-06-23(7日目/土曜日)
福山・鞆の浦へ出た最終日

医王寺
医王寺

福山は鞆の浦にやってきました。万葉集にも詠まれたような、古くから栄えた港町です。宮崎駿が「崖の上のポニョ」の構想をここで練りました、風景としても使ってます、という話題もありますね。古い町並みを歩けば見どころが多くあり、お寺と港と細い路地、どことなく尾道のような雰囲気です。

平安時代の創建になる古刹、医王寺。高台を登ったところにあり、鞆の町と、鞆の浦が一望できます。すでに疲れつつここまでやってきたんですが、疲れも忘れるような風景です。

鞆の浦の味のある路地
鞆の浦の味のある路地

味のある路地に入ってみます。ほら、尾道でしょ。まぁ地理的に近いですし、似ててもいいんですが、あまり似てるって言い続けるのも申し訳ないことですね、やめておきましょう。

幕末期、尊皇攘夷派たちが潜伏した建物が今に残る太田家住宅を見学し、いろは丸展示館へ。「いろは丸」は坂本龍馬と海援隊を乗せた船で、ここ鞆の浦沖で軍艦と衝突して沈没してるんですね。いろは丸の模型だとか海底から引き上げられたものなどを展示してます。

いろは丸展示館
いろは丸展示館

まぁそこまではいいとして。いろは丸展示館の2階には坂本龍馬がお待ちです。……悪人顔すぎて怖いんですけど。龍馬が隠れ住んだ部屋を再現してるんだとか。

鞆の浦歴史民俗資料館を見学したあと、その前にいた野良猫としばらく遊びます。

対潮楼
対潮楼

その後、対潮楼へ。鞆の浦の風景としてはよく知られる、対潮楼の広間から仙酔島を眺めるアングルは、額縁の絵のようです。

海運を見守る古社、沼名前神社を参拝し、古刹安国寺を訪ねたりして、さらには名物の鯛めしを食べたりと鞆の浦を満喫して、福山から東京へ。ここで今回の旅は終わります。(了)