そうだ、このあたり、木場から少々足を伸ばした洲崎の一帯はかつては遊郭の町だったのだと、榎田は自分がほとんど反射的に口に出してしまった言葉で初めて思い出したような気持になり、やはりずいぶん遠くまで来てしまったのだ、東京のきわの海べりの一郭まで漂い出してしまったのだとぼんやり思う。
「ひたひたと」より。
もともとは海で、明治期に埋め立てた後に遊郭が移転してきた洲崎。昭和33年まで「洲崎パラダイス」として栄えてたからそんなに昔の話じゃない。
「遊郭の跡っていうのは、今でも残っているんですかね」と榎田同様の問いを発するときには、面影はいくらかある、という感じですかね。
ほか文学作品では芝木好子『洲崎パラダイス』があり、こちらは映画化もされています。
関連サイト:洲崎遊郭跡を歩く
掲載日:2007-07-08