ぼくは「白十字」に原稿を前にしたあなたを残して、国立の駅の北口から南口にわたって、島田文具店から原稿用紙を買ってもどってくると、あなたはずっと暗い表情をして、「読みました」といい、
「先生はイジワルだ」
と呟いた。
「白十字」はケーキのおいしい喫茶店。南口、大学どおり沿いにも店があるが、文脈から見て北口店でのことか。ぼく=小島信夫、あなた=保坂和志です。
国立駅の赤い三角屋根の駅舎は町のシンボル、ということで駅舎の形をしたチョコレートなんてものも白十字にはあります。その駅舎も、中央線高架化にともなって10月に解体されることが決まりました。保存運動もあるようですが、どうなるんでしょうかね。
掲載日:2006-09-24