いや、町ぐるみで自分を化かしているのではないか、とまで豊雄は想像し、やはりすでに自分の気は違っている、と思いかけ、ふと遠くから目に入った阿須賀神社までふらふらと歩いていった。その石段の前で、もはや神に赦しを乞うて罪を祓い、引き上げるしかないとしたそのときだった。
和歌山県の新宮にある阿須賀神社です。私も行ったことあります。なんの事前知識もなく新宮を歩いてて目についた神社に入ったのがここでした。変わった名前、奈良飛鳥と関係あるんだろうか。とか思いながら、ふーんって帰りました。徐福伝説とも関係してて、また本宮・新宮より古い熊野発祥の地とも言われるところですね。
この作品は、江戸時代の上田秋成『雨月物語』のリメイク作品になりますが、上田秋成版から新宮が舞台になるのですね。中上健次リスペクトの青山真治が舞台として選ぶのは分かるのですが、原典からそうだったというのは、縁というものなんでしょうかね。
引用部は、理想の女性と出会って、もう一度だけ会いたいと追ってやってきた新宮で、彼女が見つからず途方に暮れているシーンです。
掲載日:2012-04-28