彼女は長い間猫に話しかけた

近況報告

 キダさんが父の名前を呼んだ。
 意識のない者に届かせるというより、忘れ物をした人間を呼び戻すふうだった。
 声は黒い矢印となって、消灯された廊下を走った。

以上、川崎徹『彼女は長い間猫に話しかけた』導入部から引用。ちょっとしびれました。もしかして他の人の有名な作品から引用した文章だったりするんだろうか?と思わずググってしまうほど、完成された一文です。

川崎徹はときどきこういう絶妙な振り切れ方をします。帯に書いてある高橋源一郎の推薦文に惹かれて買ったわけですけど、うん、悪くない。

『1/8のために』で川崎徹の小説の素晴らしさは堪能してましたし、それが絶版であることを常々嘆いていたりしましたので、今作『彼女は長い間猫に話しかけた』は『1/8のために』に迫る勢いの傑作、嬉しいことです。皆さんにもおすすめ。

表題作以外はそうでもないんですけどね。

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