中上健次
中上健次プロフィール&ガイド
中上健次(なかがみけんじ)―1946年生まれ。1992年死去。和歌山県新宮市出身。小説家。
1969年「一番はじめの出来事」(『十九歳の地図』に所収)でデビュー。妻は紀和鏡、娘は中上紀。
1976年『岬』で第74回芥川賞、1977年『枯木灘』で第31回毎日出版文化賞および芸術選奨新人賞受賞。
秋幸三部作と呼ばれる『岬』→『枯木灘』→『地の果て至上の時』の系譜に、外伝的『鳳仙花』、紀州から出て戻る『日輪の翼』→『讃歌』の系譜、夢現の『化粧』→『熊野集』といろいろありますが、ほとんどが故郷の紀州あるいは新宮を舞台に、著者自身の複雑な血縁を描き出すような作品が並びます。初めて彼にふれるにはどれから手に取っていいか迷うかもしれないですね。そんな人はやはり『岬』から入るのが無難。『十九歳の地図』でもいいけど。主要作品は小学館文庫で「全集」としてまとめて刊行されたのでこちらで探すのが手に入れやすいです。ただし、上でおすすめした『岬』などは小学館文庫では短編セレクションになっているので、本来の短編集としての『岬』を手に入れるなら文春文庫です。
関連作家・似てるかも作家:大江健三郎 宇佐見りん フォークナー 柄谷行人 村上龍 開高健 吉田修一 安部公房 高沢秀次 高橋源一郎
中上健次おすすめ本ベスト5
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高貴ゆえに澱んだ血の宿命を生きる中本の一統。破滅的に生き若死にしてゆく者らの輪廻を見守るオリュウノオバ、その神の座が禍禍しく迫る長編。貴と賤を描ききり、円環しながら拡大する曼陀羅世界を堪能してみよう。文学(小説)
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『枯木灘』に続く「秋幸三部作」完結編。弟殺しの罪を償って帰ってきた秋幸は路地が消滅しているのを知る。彼の手でやる前に路地は自壊し、父龍造は自滅する。何もなくなった所から、著者は再び始めようとするのだ。文学(小説)
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「オバ」らを乗せたトレーラーで熊野を出、東京・皇居を目指す男の巡礼物語。したたかな老婆に振り回されながらも楽しく旅は続く。その猥雑さ、品のなさでリアルな存在としての老婆らを描き出すことに成功している。文学(小説)
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短編集。主人公である予備校生の苛立ちが全てを覆う表題作がすばらしい。なにしろ一息つける部分が全くないのだ。全ての文章で刺のある言葉が選ばれていて、改行改段も少ない。息苦しさが満点。鬱屈する青春の鏡だ。文学(小説)
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『岬』の続編にあたる長編。その評価を絶対的なものにした傑作。父・龍造はここで巨人のように立ち現れる。血の呪縛、土地の呪縛はより強く秋幸を苦しめる。ここで言うのもなんだけど情景描写の的確さには迫力ある。文学(小説)
中上健次レビュー一覧(46冊)
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単行本初収録作品もたっぷり入ったエッセイ集成。自著解説を含む文学論、作家論作品論が力強く展開される。「毒虫ザムザ」における『千年の愉楽』成立過程も(『オン・ザ・ボーダー』で読んでても)呆然とする読み物。文学(エッセイ)
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とにかく長い。冗長だと言ってもいい。路地を消滅しつくした後の苦悩が手に取れるようだ。胸に青あざをもった三人の男を中心とした右翼の失地回復作戦。終盤、八犬伝的冒険活劇になりつつ未完で終わる大長編遺作だ。文学(小説)
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