椎名誠

椎名誠プロフィール&ガイド

椎名誠(しいなまこと)―1944年生まれ(81歳)。東京都世田谷区出身。小説家、エッセイスト。

デパート業界誌編集長を経て、『本の雑誌』編集長に。以後作家、映画監督として活躍。

1989年『犬の系譜』で第10回吉川英治文学新人賞、1990年『アド・バード』で第11回日本SF大賞受賞。

著作は幅広く量多いです。小説作品はSF的「超常小説」と優しさに満ちた「青春小説」に大別されます。あまり頻繁には出ないのですが、超常小説のほうが読書人たちからの評価が高いです。紀行作品では極寒だったり砂漠だったりハードなものから、日本の島事情をさぐったり酒と焚き火だったり温泉万歳だったりののんびり旅も。写真集はモノクロ中心。素朴な人々の素朴な表情をとらえた作品が多いです。エッセイは「昭和軽薄体」と自称していた独特の文体で、初期はとにかく文章表現で笑わせます。徐々にその色はなくなってしまったわけですが。初めて触れるなら『パタゴニア』を挙げてみましょうか。紀行文ながら、椎名流私小説の温かみがあるので、傾向がわかるかと思います。

関連作家・似てるかも作家:東海林さだお 沢野ひとし 開高健 田中小実昌 村松友視 太田和彦 木村晋介 目黒考二 阿川佐和子 野坂昭如

椎名誠おすすめ本ベスト5

  1. 『アド・バード』表紙
    日本SF大賞受賞の大作。高度に発達した広告によって滅びた未来都市。蛇口を捻れば宣伝文句が流れ、鳥たちは商品を謳う。異形な生物に導かれ都市中心部へ。これを読めば著者への印象がガラリと変わる。カッコよすぎ。
    文学(小説)
  2. 『水域』表紙
    SF3部作第2弾。なんらかの理由で水没した世界を舟でさまよう男の冒険譚だ。終末的風景の中を、怪しい生物が跋扈する。人をまず疑ってみなければ生きていけない世界で、ふいに出会う愛。そして感動のラストシーンへ。
    文学(小説)
  3. 『武装島田倉庫』表紙
    SF3部作第3弾。戦後の泥濘化した世界を生きぬく男たち。混乱に乗じた略奪や局地的衝突は絶えず、倉庫を守るにも銃器が手放せない。全体が曇天の薄暗さで鬱々としているが、物語が湧き立つ熱い奔流に読後感は良好だ。
    文学(小説)
  4. 『銀天公社の偽月』表紙
    『武装島田倉庫』の嫡男はこいつだった。荒廃した世界をうごめく男たちを偽月が優しく照らす。脂雨の滑りが肌から取れない連作短編集。サイバーな匂いさえシーナワールドのなかでは自然物として定着してて。いいね。
    文学(小説)
  5. 『パタゴニア』表紙
    パタゴニア紀行。気温の低さにカメラがだめになる極地冒険だが、危険な精神状態にある妻を日本に残してきたという悔恨の曇天が遠く広がっている。タンポポという哀しい風景が風にそよぐまっすぐな愛の物語でもある。
    文学(日記・紀行)

椎名誠レビュー一覧(191冊)

  1. 『わしらは怪しい雑魚釣り隊 エピソード3』表紙
    マグロも釣るしザリガニも釣る。キャンプはもちろん井戸も掘る。突然環境問題を語り始めてしまったり、羨ましい自由さ。筆の滑りもよくって「仕事じゃない趣味」感がいっぱいだ。こんな幸せな老後生活を送りたいね。
    文学(エッセイ)
  2. 『チベットのラッパ犬』表紙
    超常SF。中盤の転換に目新しさがあって「おっ」と思うのだが、「これが書きたかっただけだな」とも解る。大きな世界の一部分だけを切り出してるのだから起承転結も落ちなくていいのだ、という世界肯定の自信ぶりね。
    文学(小説)

椎名誠の新刊・近刊

  • 椎名誠『真夜中に吠えたくなって』表紙
    椎名誠
    2025-09-02
    KADOKAWA
    他人の耳鳴りの話、毎年の猛暑、家に潜むナニモノか……。80過ぎても吠えたいことは山ほどある! 作家生活45周年の記念碑的エッセイ集! シー...
  • 椎名誠『哀愁の町に何が降るというのだ。』表紙
    椎名誠
    2025-03-12
    本の雑誌社
    あの哀愁の町が帰ってきた! 1981 年から82 年にかけ情報センター出版局から全3巻で刊行された『哀愁の町に霧が降るのだ』は東京の下町、...
  • 椎名誠『思えばたくさん呑んできた』表紙
    椎名誠
    2024-10-21
    草思社
    今日もぐびぐびっ! 極上の“酒バカ”酩酊エッセイ集! ただもう、うまい酒を求めて……飲んで飲んで飲みまくる! 流木焚き火を囲みヒミツのキャ...