川上弘美

川上弘美プロフィール&ガイド

川上弘美(かわかみひろみ)―1958年生まれ(66歳)。東京都文京区出身。小説家。

1994年「神様」でデビュー。

1996年『蛇を踏む』で第115回芥川賞、1999年『神様』で第9回紫式部文学賞および第9回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2000年『溺レる』で第11回伊藤整文学賞および第39回女流文学賞、2001年『センセイの鞄』で第37回谷崎潤一郎賞、2007年『真鶴』で第57回芸術選奨、2014年『水声』で第66回読売文学賞(小説賞)、2016年『大きな鳥にさらわれないよう』で第44回泉鏡花文学賞、2019年その活動により紫綬褒章受賞。

『センセイの鞄』が話題になり、私もそこから入ったクチなんだけれど、この本自体は彼女の作風としては異質。川上弘美ってこういう作家なんだなと分かり、その次の作品へ進むためには、まずは『神様』から読み始めることをおすすめします。基本的にほのぼの不条理な人なんです。ようするに村上春樹における『ノルウェイの森』みたいなポジションの本なわけですね、『センセイの鞄』。

関連作家・似てるかも作家:小川洋子 江國香織 角田光代 堀江敏幸 髙樹のぶ子 梨木香歩 山田詠美 川上未映子 宮本輝 島田雅彦

川上弘美おすすめ本ベスト5

  1. 『センセイの鞄』表紙
    元先生と教え子が居酒屋で再会。飲み友達からゆっくり育ってゆく恋の坂道には、郷愁のような痛みを覚える。懐かしい恋。隙だらけの行間から立ち上るこの温かみは何だろう。旅行のシーンも微笑ましくてドキドキする。
    文学(小説)
  2. 『真鶴』表紙
    失踪した夫を想いながら何度も呼び寄せられる真鶴。その水際の先は異界だ。「ついてくる女」ばかりでなく母も娘も不倫相手も輪郭が溶けあって、皆すでに死の側かと思う。それでも繋ぎとめるための何かが、光るから。
    文学(小説)
  3. 『溺レる』表紙
    突き出した棘に刺さりに行くようなアイヨクの表題作が痛くて好き。不条理系の短編集にも関わらず「ああこれも愛だよな」というピリピリした安堵感がそれぞれの短編にあって。このバランスの有り無しが重要だと思う。
    文学(小説)
  4. 『ニシノユキヒコの恋と冒険』表紙
    男の女性遍歴を十人の女性の側から語る連作短編集。幸彦の主体が無色に描かれている一方、女の愛し方は個性的なキュートさだ。ドンファンじゃなくって振り回してるのは女の方かも。始まって終わる恋の多様さに放心。
    文学(小説)
  5. 『光ってみえるもの、あれは』表紙
    川上作品としてはわりと素直に少年の成長を見守る青春小説。登場人物には友達みたいな家族だとか女装する親友だとか、定型ながら不思議な綾がある。ハッピーエンドとも言えないのにこの爽やかな読後感はなんなんだ。
    文学(小説)

川上弘美レビュー一覧(27冊)

  1. 『神様 2011』表紙
    福島原発の事故を受けてデビュー作を改稿。防護服とガイガーカウンターを身につけて散歩に出かけるくまのお話。損なわれてしまったものに対する、誰に向けたらいいのか分からない怒り。ここで生きるしかないんだね。
    文学(小説)
  2. 『機嫌のいい犬』表紙
    初の句集。デビュー当時から俳句をやってたのは知らなかった。小説に比べたら物足りなさは否めないけど、著者らしい言葉使いがちゃんとあって楽しめる。技術広がる感じも。何より楽しそうで、俳句を作りたくもなる。
    文学(詩歌)

川上弘美の新刊・近刊

  • 石井桃子/高峰秀子/川上弘美『精選女性随筆集 石井桃子 高峰秀子』表紙
    石井桃子/高峰秀子/川上弘美
    2024-04-09
    文藝春秋 文春文庫
    『クマのプーさん』の翻訳者で、子ども達のために奔走した児童文学の第一人者・石井桃子。一家の働き手として昼夜働き通しの子役時代から、その鋭い眼...
  • 武田百合子/川上弘美『精選女性随筆集 武田百合子』表紙
    武田百合子/川上弘美
    2024-01-04
    文藝春秋 文春文庫
    夫・武田泰淳と過ごした富士山麓別荘での日々や、彼の死後に綴ったエッセイなど。武田百合子ならではの視点が光る名随筆集。
  • 有吉佐和子/岡本かの子/川上弘美『精選女性随筆集 有吉佐和子 岡本かの子』表紙
    有吉佐和子/岡本かの子/川上弘美
    2023-12-06
    文藝春秋 文春文庫
    「才女」の形容を遥かに超えたベストセラー作家有吉と、夫・恋人・息子への愛の苦悩を歌と小説に昇華させた岡本の遺した散文、書簡。