現代文学100字レビュー

ピックアップレビュー

  • 『万延元年のフットボール』表紙
    「乗越え点」たる長編。自死の朱色、万延元年の一揆を再現する陰鬱な祝祭じみた暴動、四国の森の土俗的高揚感、「反社会的な結束」。穴の中へ梯子を降りて行く暗闇が最後まで晴れない。重すぎる荷にヤラれるばかり。
    文学(小説)
  • 『雨天炎天』表紙
    ギリシャ・アトスの修道院を訪ね、トルコの兵隊に空手を教える、じっくり腰を据えた紀行。それぞれに趣向は違って、ギリシャ編はやはり修道院的に厳格な空気を漂わせているし、トルコ編は埃っぽく温かい太陽の匂い。
    文学(日記・紀行)
  • 『蝶の皮膚の下』表紙
    脳に障害を抱えた元ボクサーと、彼を救いたいと走るジャンキー女。互いの自意識の質を確かめ合うような長編。ストーリーは単純なのに、伸縮自在の描写の襞にからまって迷子にさせられる。それが心地よければ勝ちだ。
    文学(小説)
  • 『愛のあとにくるもの』表紙
    一つの恋愛を男女それぞれの側で二人の作家が書き分ける『冷静と情熱のあいだ』と同じ形態。日本人男性と韓国人女性の七年越しの想い、って「日韓」で凡庸を脱するわけじゃない。孔枝泳の方も読まねば評価できずか。
    文学(小説)
  • 『象工場のハッピーエンド』表紙
    軽いタッチの短文。双子や羊男が再登場したり象を作る工場だったり万年筆だったりするが、ここでは文章よりも、やはり軽いタッチの安西水丸のイラストレーションがいい。巻末の対談「襖絵事件」もいいね。猫を放つ。
    文学(エッセイ)

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