現代文学100字レビュー
ピックアップレビュー
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緊密な連作を想像させる造本イメージよりはもうちょっと振れ幅のある短編集。普段使わない領域を弄ってくるような文体に酔いながら、気づけばモノトーンの世界にどっぷり浸かってる。冒頭の銅版画の印象が最後まで。文学(小説)
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シリーズ完結編、終点イスラマバードまで。ガンダーラの事物に触れながらも中国を振り返り、故郷へ遡り、道に向き直ることで旅の想いはすでに土地を離れている。鳩摩羅什の背中は霞んでいても、自分の足跡は見える。文学(日記・紀行)
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小説の仕組みを事細かにあげつらうメタ・フィクション。「最高の言葉」を求めてマカロニ法師一行は世界を旅する、小説という小さな容器から逸脱することを楽しみながら。物語に浸らせないことが、物足りなくもある。文学(小説)
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現代日本の哀しきゴミ事情にモンゴルのネコ事情など、雑多なエッセイが雑多に並ぶ「赤マント」も五冊目に。特に映画撮影で入ったモンゴルの話が多く、対照的に日本社会の幼児性が浮き彫りに見えてくる、という寸法。文学(エッセイ)
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真珠湾を飛んだ戦友と再び訪れるハワイ。平和への祈りが、今は亡き妻への想いと重なって、大文学的スケールがあり読ませる。歴史を感じたい人間を描きたいという著者の近年の作風には戸惑いぎみだったりするのだが。文学(小説)




