現代文学100字レビュー
ピックアップレビュー
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学生のおちゃらけ的な劇中劇の連鎖から生まれ出るアイロニー。狂言回し、断食芸人、ダンサーがメタを食い尽くす。終わりのスイッチを押すのは誰なのか。安心して眠れる場所なんてここにはない。付録付き第二戯曲集。文学(戯曲)
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初収録のボーナストラックを含むベスト盤、ということでOK? 家族との関係性と、異国の風景が中心となった七編。不快感がこの作家の拠り所だなと改めて思う。田舎の母が大音量でニルヴァーナ。って短詩的な情景だ。文学(小説)
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明治の十津川を舞台にした物語。夢か現か、聖か毒か。つまりは胡蝶の夢だ。真拆は「明治の人みたいに」真実を悩む。ストーリーとしては平凡と言えるが読めない漢字と大時代的な文章修辞で時代を感じさせる現代文学。文学(小説)
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チェスの宇宙に生きた少年の物語。出会いと別れ、波乱に満ちた人生なのに、こんなにも静けさに満ちている。盤上(と机の下)に流れる美しく整った時間に見とれてる間に驚きのラスト。読み終わるのが惜しい親密な世界。文学(小説)
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初の文芸作品集。直感的に選ばれた言葉だけで世界造りは完璧。感覚に重きを置いたゆえの文体の無政府さがまた、崩れかけの家屋のような緊張感を与えている。「女の子」の残酷な眼差しは童話を騙っても消えていない。文学(小説)