現代文学100字レビュー
ピックアップレビュー
-
どうにもまともな短編集ではない。「マリコちゃん」「ユリコちゃん」「サチコちゃん」と続くタイトルの脱力感。「到着」を短編としていいのかどうかという懐疑。そこにあっては「無人警察」の存在など問題ではない。文学(小説)
-
デビュー作で芥川賞を取り、映画も撮る駆け足ぶりだった初期のエッセイ集成。「期待の新人」監視網の中で肩に力も入ってる。そのために逆に素直な文章なのかも。そうだ、これ読んで中上健次に興味を持ったんだった。文学(エッセイ)
-
北朝鮮のコマンドが福岡を占拠する。政府の場当たり対応やメディアの狼狽に兵士の心情を絡めながら、国家として何が最優先事項なのかと問う。爆風ひるがえる映像美と瓦礫にきらめく希望が、この国の限界を押上げる。文学(小説)
-
吉野の奥に現存する南朝の血統。そこには歴史を覆すような源氏物語古写本が眠っていた。唯一の跡取りだった娘が心中して謎は混迷へ。著者の自説を小説という形で読みやすくした歴史論。タブーに触れまくりで楽しい。文学(小説)
-
撮影のため島へやってきた写真家が、町長選挙と利権に絡む事件に巻き込まれてゆく長編。島の閉鎖性・排他性がどんよりとリアル。その分、気になる女と島の祭りの涼やかさの抜けがよい。文字どおりに嵐の後の青空で。文学(小説)